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森田光コ社長講演録
はじめに

「自然は祖先からの贈り物ではなく、子孫からの預かり物である」 (アメリカインディアンの言い伝え) この言葉に動かされて、地球環境の支援にかかわらせていただくようになってから四年になります。

地中の資源をえぐり出し、澄んだ大気に毒を吐き散らし、美しい水に汚染を垂れ流すことと引き換えに、私たちは豊かで便利な生活を手に入れてきました。

  大自然は一度破壊すると、簡単には元に戻せません。だから、地球の面倒をみることは、私たち人類が直面する最大の課題だ、と叫ばれるようになりました。その大切さに気づいた人々の努力によって、最近では自然破壊の問題や、それによってひきおこされる結果が身近なものとして真剣に受けとめられるようになりました。

  何とかしなければ、という思いが世界規模で高まってはいますが、思っている以上に地球を傷つけているので、すでに手遅れの状態であるといわれています。

  二十一世紀までには、世界の人口が六十億人を越えるものと予想されていますが、食糧問題、化石燃料の枯渇(こかつ)の問題、発展途上国と工業先進国との格差の問題があります。

  このままいくと、破壊は速度をあげて、どんどん進んでいくものと思われます。破壊を完全に止められないまでも、せめてその速度をゆるめたいものです。一人でも多くの人がこのことに気づいて、世界の人々と手を結び、取りかからなければいけないと思います。

  循環農法の赤峰勝人さん、FFC水やパイロゲンの赤塚充良さん、その他にもいろいろな方々が、美しい地球を守るためにそれぞれの専門分野で感じられた地球の叫(さけ)びを代行発信してくださっています。

  『健康な身体ときれいな水を守る』ことをモットーに、長年石けん運動を展開していらっしやる、シャボン玉石けん(株)社長の森田光コさんのお話の中から、私たちが簡単に個人レベルで実行する一つひとつがわかりました。

  私たちのかけがえのない子どもや、その後に続く人々のために、預かってきた以上の美しい地球を私はお返しがしたい……。

名古屋市 西川博子(主婦)
  私の、この小冊子発刊の動機を西川博子さんが見事に語ってくれました。

  信念に徹する〃若松育ち〃の森田社長の講演を聴いて驚きました。合成洗剤の恐ろしさを、何も知らない私は反省することばかりでした。今、スグできること、それは森田社長の教えを守り、「海や川を泣かす」私であってはならないと。

  小書を通して、皆様とのご交流を「夢」みつつ…… 松岡 浩

   森田光コ社長ご講演

「体(からだ)の叫(さけ)びが聞こえますか……。」

そして、海も川もないています

1 合成洗剤の流行

  私は二十四年間「無添加(むてんか)の石けん」のみを製造販売しています。

  その前は、どういうことをやっていたか、といいますと、親父(おやじ)の時代から石けんの卸問屋をやっておりました。私の代になりまして、昭和三十年代になりますと、インスタント・ラーメンが発売され、そして、電気洗濯機も普及してきて、花王石鹸が「ワンダフル」というソープレス・ソープ(石けんでない石けん)を発売しました。そのころから、民間のラジオ・テレビ局などが設立され、宣伝活動が活発化し、宣伝効果によって合成洗剤が便われ出しました。

  昭和三十八年が合成洗剤と石けんの売上比が逆転した年なんです。

  私どもも、昭和三十五年頃から、石けんは売れなくなるだろうということで、合成洗剤に切り替えました。おかげで順調に売り上げも伸びて、利益もそこそこ出てきました。仕事のタイミングが良かった、ということもありまして、利益が出過ぎるくらいで、株主さんにも配当がたっぷり出せ、従業員にも賞与をたくさん出せました。

  そのころ私はまだ三十歳代なんですね。三十歳そこそこの人間が、あまり苦労をしないで利益を出すと、ろくなことはない。酒はもう毎晩で、遊ぶことばかりしていました。今から思うと、われながらイヤなやつでした。

  仕事は順調でしたが、ただ一つ私には悩みがありました。毎年梅雨(つゆ)前くらいになりますと、ベルトの周りに赤いブツブツした湿疹(しっしん)が出て、かゆいんです。あせもとも違うのです。原因がわからずに、病院を何軒もはしごして廻ったんです。でも全然よくならない。海水がよい、と聞きましたので、一升びんに海水を汲んで帰り、風呂場でそれをかけたり、温泉がいいよ、と聞くと温泉に行く。しかしこれも駄目(だめ)でした。最終的には、自分は生まれつき皮膚(ひふ)が弱いんだ、仕方がない、とあきらめていたわけです。

2 無添加石けんの誕生

  昭和四十六年、国鉄(現JR)の資材部から、おまえのとこの洗剤を使っていると、機関車からサビが早く出る、といわれたので、国鉄の本社に問い合わせると、合成洗剤より無添加の石けんのほうがサビがこない、という返事がありました。石けんは、今まで作ったことがあるんですが、無添加というのは作ったことはなかったんです。粉石けんには、炭酸塩をまぜる。固型の洗濯石けんには、珪酸塩を必ずまぜる。いわゆる「添加剤入の石けん」しか作ったことがなかったんです。それで、さっそく無添加の石けんの成分を調べますと、石けん分が九十五%以上、水分七%以下でした。そんな、水分七%以下の石けんなんか作れないなあ、と思いました。

 国鉄への予定の納入金額が、当時で四百六十万円です。今でいえば四千六百万円以上の価値があります。それで欲が出て「何とかして作ります」と返事をして、試行錯誤(しこうさくご)しながら、無添加の石けんを作り上げて納入したんです。

3 自社製品が使えない社長

  こんなうるさい規格の石けん、どこがいいんだろうと、家に持ち帰り使ってみました。

  気がついたのは、五、六日目でした。風呂に入ったとき、十年近くも悩まされた湿疹がなくなっているんです。びっくりしました。そのときは何故なおったのか分からなかったのですが、いずれにしても、湿疹が治まったことは非常に嬉しかったです。そういえば、ここ二、三日、例のかゆい、というあの思いがなかった、まあやれやれということでした。

  持ち帰った無添加の石けんがなくなりましたので、またわが社のドル箱の洗剤を使いましたら、今度は一日でパアーッと湿疹が出たんです。それで、はじめてドル箱の洗剤が私の湿疹の原因ではないかと気づきました。もうびっくり、というか、情けないというか・…・。

  洗剤屋のおやじが、自分のところの洗剤で、十年近くも湿疹で悩まされていた。はっきりいって人にいえる話ではない。あの湿疹の苦しみを思うと、もう二度と合成洗剤を使う気はしない。しかし自分は使用しなくて、会社ではその洗剤で利益をあげ、そして私はどんどん作れ、どんどん売れ、といっていたんです。

  原因がわかると、胸のうちがギクシャクした感じで、なんだか後(うし)ろめたいことをしてお金を儲(もう)けているという思いがしました。ですから直(す)ぐに合成洗剤の生産を中止して無添加の石けんに切り替えればいいんですが、問屋とか、スーパーとか薬局とかに、こういうものを売りたいんだ、と見本を持っていっても、こんな品物が売れるか、というのです。おまえのところの合成洗剤が売れているのだから、いいじやないか、と誰も試作品すら使ってくれませんでした。

  それで、私と同じように悩んでいる人がいるはずだ、と消費者向けに一万個ばかり作りまして、アンケート用紙をつけて、北九州の小倉の一番の繁華街で通行人にバラまいたんです。一か月もしないうちに、アンケートのはがきが戻ってきて、赤ん坊のオムツかぶれが良くなった、おばあちやんが、いつも背中がかゆいといっていたのが言わなくなった等と書いてありました。いつから売るのか、どこで売っているのか、値段はいくらか、と問い合わせがありましたが、肝心(かんじん)の流通のほうは、一切(いっさい)見向きもしてくれませんので、製造をはじめても売れません。売れなきや会社は倒産するので、それで、ああでもない、こうでもない、とやっていました。

  三年くらい経ったころです。私の首筋が燃えるように熱く、そして肩がこってしょうがなくなり、病院へいったのです。血圧の上が二百十五、下が百で、医者に、こんな高い血圧で仕事をしていたら死んでしまう、ほかのところも悪いかもわからないから調べてみよう、と言われました。

  その日に生まれてはじめて入院したのです。今まで元気で病気ひとつしたことがないので、病院のベッドはあまり気持ちが良いものでなく、その上「いつ死ぬかもわからんぞ」といった先生の言葉が頭にこびりついて、その時、はじめて人間は生まれたら死ぬんだ、というあたりまえのことを悟(さと)りました。

 一度しかない生命なら、自分の正しい、と思ったとおりをやらないと死に顔もあまりいい顔ではなかろう。それなら、もう、合成洗剤はやめよう、と思ったんです。そうしたらご一、四日目に血圧が正常に戻ったんです。先生にその理由を聞いて見ましたら、それは過労か、酒の飲み過ぎが原因だったのでしょう、無理をせんように、ということで退院しました。

4 無添加石けんの発見

  合成洗剤は体に悪い。環境にも悪い。いくら利益が出るからといって、こういう物を売ってはいけない。その点、無添加の石けんは、体にも環境にもやさしい。今後、これに全部切り替えようと決心しました。

  当時、社員が六十八人いたんですが、社長、何を言い出すんですか、試供品をスーパーや問屋に配っても、こんな品物は売れない、といって、どこも相手にしなかったじやないですか、と言います。私の母は、そのころまだ生きていたのですが、母親に無添加の粉石けんや固型石けんを渡すと、これはいい。肌着も洗ったあとが、ふかふかしている感じ。そして、ところどころ出ていた湿疹もよくなったと喜び、ズーッと使っていたんです。

  その母親でさえ、会社にどなり込んで来て「おまえ、洗剤を止めて、売れない石けんを作るって本当かい」というのです。「本当です。今まで売っていたのは、体に悪く、生き物を殺し、田んぼに流せば稲が枯れる。ああいうものは売っちやあいかん」と、私は反論したんです。「おまえは会社を潰(つぶ)す気か」と、ひどいけんまくでしたが、私も一回決めたら、てこでも動きません。もう決めてしまった。どうしようもない、ということでふみきった訳です。それは昭和四十九年のことでした。湿疹が治ったと確信してから、丸三年間は、どうするか、こうするかということで左右に揺れ動いていたんです。

  私の予想どおり売り上げが今までの一%。十%、一割じやないんですよ。落ち込んでしまいました。朝、会社へ出ますと、いつも二、三人ずつ、白い封筒で退職願です。今のうちなら規定どおりの退職金がもらえます。だが、ズルズルして、おったら、この会社、潰(つぶ)れるぞ、とみんなそう思ってどんどんやめていきました。一番ひどいときは、私を含めて五人になってしまいました。

  これでは仕事になりませんでした。経営からいったら、その時点で倒産なんです。けれど、幸(さいわ)い、それまでの貯(たくわ)えがあったこと、それと、もうひとつは、生き延びさえすれば、わが社の石けんの良さは誰かが認めてくれるはずだ、とにかく会社を潰(つぶ)さないことが一番だ、ということで、そのために、それまで手形で支払っていたのを、全部、現金支払いに変えました。

  もちろん、その資金は銀行さんが貸してくれました。ですからそれ以降は、資金繰りが悪いときは、小口の方は現金で支払いましたが、大口には「すみません入金が遅れましたので」と、言い訳しました。遅れたんではないのです。売り上げがないので入金がない。それで、あと半月待ってくれと頼んだんです。今までの取り引きが長いので、原料屋さんにしろ無理を言えばそれを聞いてくれましたから、倒産しないで今日があるわけです。

  今までは合成洗剤を作ったり、売ったりしてきた社員で構成してきましたが、これからは新しい社員を入れて、無添加の石けんを、自分たちが作り自分たちで売るんだ、という気概(きがい)の人間を集めなくてはと思い、新卒の大学生や女性を入れました。そのうちに、以前から残っていた四名も全部やめてしまいました。現在は九十八名になっています。

  無公害の石けんを作るんだ、売るんだ、そういう説明を聞いて、やりましょう、と共感して入ってきた人ばかりですから、今日(こんにち)では二十年が経過して、それらの人は幹部になっています。今から思えば、あの時点で、続けて合成洗剤を売っていましたら、花王とかライオンとかの大手の独占化が進んでいますから、私どもの経営は不振な状態で、廃業か、転業せざるを得なかったんじやないかと思います。

  こうして、みんなが反対しても「虚仮(こけ)の一念」といいますか、悪いものは作るな、売るな。社会のためにいいものを広めるんだ。健康な体とキレイな水を守る、ということをモットーに今日までやってきました。

  やはり生きている、ということはですね、ただ飯を食って、寝てということで生きておっても本当の生きがいにはならないと思うのです。何を選んで生きるか。こういう、えらそうなことを言ってはいけないのですが、何を選ぶかということは、何を捨てるか、ということになると思うんです。私は、全部捨てて、かかったから、もう後がない、前に進むしかなかったんです。

5 小さな広告の効果

  無添加石けんを「シャボン玉」と名づけて売りだして間もないころ、朝日新聞に、有吉佐和子さんの「複合汚染」という小説の連載がありました。それを読んでいますと、やがてカネミ事件のPCBとか、そういう問題から農薬の話になる。このあとは水の問題となり、やがて合成洗剤の記事になるっ…と絶対に思いました。
  その小説の一番うしろに、四角の囲みの広告の欄があり、私はそれに目をつけました。いつ頃から洗剤の話になるか、ということの予想を立て、三月の末か、四月のはじめには合成洗剤の話になると思い、その日を狙って五、六回分の広告を出したんです。
  運が良く、合成洗剤の記事になった日に、一回目の広告が載りました。当社の広告は小さいもので、「こういうものがある」ということを知ってもらえれば良いくらいの考えだったんです。
  読者が「複合汚染」の小説を読むと、その隣に当社の広告があり、これが大当たりだったんです。その日の朝から電話が鳴りっばなしなんです。もう合成洗剤をやめて石けんを使いたい。そういうのが欲しい、と消費者からどんどん問い合わせがありました。当社はそれまで消費者に直接売ったことはなかったんですが、とにかく売り上

げのない時ですから、消費者でもよいからと。ただし、一ケース単位で買ってください、とお願いしました。
  よく売れました。従業員も石けんがこんなに売れるとは知らなかったと、希望を持ってくれました。しかし、日本人は「熱しやすく冷めやすいんです」あの小説が終わったら、パタッと売り上げが止まりました。これはもうどうしようもない。ただありがたかったのは、あの小説が連載されたおかげで、それまで見向きもしなかったスーパーが置いてくれるようになったんです。
  全国的に消費者運動があって、合成洗剤ばかり置いて、なんで粉石けんを置かないんか、という突き上げがあちこちにあり、大手のスーパーが売れても売れなくても粉石けんをおこうという風潮になったわけです。そのおかげで、私どもの製品がやっと問屋からスーパーヘ流れるようになりました。
  九州から山口県にかけての店頭に置いていただけました。しかし、粉石けんのよさや使い方の説明がないと、やはり消費者は買ってくれない。売り場に並べる
だけでは駄目なんです。ですから、こちらが思っているようには売れなかったのです。

6 石けん条例の裏に

  滋賀県で琵琶潮を守るために合成洗剤をやめて、石けんを使おうという運動が起こりました。だから、私どもも、滋賀県に売りこみをかけまして、県下で一番大きい「平和堂」というのがありますが、そこにもうちの製品が並んだんです。
  しかし、滋賀県に行って驚いたのは、粉石けんとは名ばかりで実際に売られているのは、石けん分三十%。JIS規格では石けん分五十%以上なのに、その規格にも満たない粗悪品ばかりです。私どものものは、純石けん分が九十九%。全く成分がかけ離れています。もちろん価格もかけ離れて高いのです。
  滋賀県の竹村知事以下、全政党とも合成洗剤をやめよう、そして石けんに切り
替えようといっていたのが、条例が出来あがったときは、合成洗剤に含まれているリンが悪いから、合成洗剤からリンを取りましょう、という条例になったんです。その条例を「石けん条例」と位置づけたんです。
  マスコミは何を勘違いしたのか、記事やテレビで、この滋賀県の条例を持ち上げたんです。だから、今度は環境庁あたりが、粉石けん、または、無リン洗剤を使いましょう、と各市町村へ指示を出したんです。ですから、お上からお墨付きをもらったようなもんです。もう条例ができるやいなや、各社が無リン洗剤を大々的に発売したんです。無リン洗剤ならば環境を汚さないんだ、琵琶潮も守れるんだと、みんな錯覚してしまって、逆に琵琶湖の汚染が進んでおります。
  どこでどう変わったのか、合成洗剤をやめよう、といったのに僅か四〜五日の間にひっくり返って、リンだけを便用しない、という条例に切り替わったんです。洗剤業界が政治への働きかけをした、としか思えません。
  私どもが、合成洗剤は悪い、石けんはいいんだ、というデーターを取り上げて
発表しますと、今度は、逆のことを大学教授などを使って発表するわけなんです。「石けんを使うと、石けんカスが出て、へドロとなり、かえって河川などが汚染される」というような反論になってくるんです。

7 石けんを広める運動家

  私は全国をあちこち回って、石けんを使いましょうと、石けんを広める運動家として動いています。会社は、七年ほど前に今までの赤字を解消して利益が出てきました。
 シャボン玉というのは、きらきら輝いて、青い空に飛ぶのが、シャボン玉ですね。それまでの十七年間というのは、泥にまみれて地面にピッタリくっついて、ちっとも飛ばないシャボン玉でした。桃粟三年柿八年といいますが、バカなシャボン玉十八年。やっと十八年目に浮き上がったんです。みじめというか、よくも
潰れなかった、といいますか、もちろんお金がないから私は給料もとれませんでした。そういうことが二、三年あったと思います。
 そこまでして、これを広めるんだ、と私が突き進んだ最大の理由はなんであったか。合成洗剤は調べれば調べるほど怖いんです。恐ろしいんです。今、私たちの食べ物は農薬潰けになっています。食品添加物で一日しか持たない食べ物が一週間でも十日でも腐(くさ)らない。そういうのが口から入るんです。
 洗剤は、皮膚からみなさん方の体に進入してきます。私の家の排水溝には、赤い糸みみずがいます。昔はどこの家にも糸みみずがいたんです。溝にはみじんこがいたんです。今はいません。探すのが大変です。なぜいないか、といいますと、合成洗剤や合成のシャンプー、リンス、食器洗い用洗剤などが家庭排水として排水溝に流れるからです。
 流れると糸みみずは一日で全部殺されてしまい、みじんこは八時間で全滅です。メダカなんてみじんこが餌(えさ)になるんです。みじんこがいないとメダカがいなくな
る。だから、今、小川でメダカを見ることが少なくなっています。いや、それは洗剤ではなく、農薬が原因だ、という人がいます。
 しかし、合成洗剤で洗濯した排水で、とにかく一日で糸みみずは殺され、みじんこは八時問で死ぬ。この事実をもってすれば、農薬も怖いかもしれないが、合成洗剤も非常に怖い。だから、こういうことを一人でも多くの人に知ってもらいたい、というのが私の今日までの生きるすべての目標だったんです。
 いま、合成洗剤の怖さが分かってきた人が多くなりましたが、以前は石けんや粉石けんを使いましょう、といいますと「私、粉石けんを使っています」「どこのメーカーの何を使っています」と聞くと「大手メーカーの『○○』です」という。「○○」は合成洗剤です。「でも、粉でしょう。液体でなかったら粉石けんです」合成洗剤と石けんの差が分かってないんです。
 では、あなたの使っているのは、海とか川を汚すという考えはありませんか、と聞きますと、それは確かにある、といいます。しかし店頭に並んで安く売って
いるから私は買うんだ、というわけです。

8 日本人は弱い

  ひところに較べれば、石けんの愛用者が非常に増えています。だけどこれはどうして増えたんでしょうか。
  いま、人が亡くなったと聞いたら、ほとんどガンです。新聞記事には心不全と書いてあっても、原因はガンなんです。それほど誰かが亡くなったといったら、まず、ガンと思えば間違いないです。大腸ガンあり肺ガンあり胃ガンありです。
  昔は無かったアトビーとかアレルギーとか、花粉症とかが何故こんなに増えたのか。食中毒の原因の、O−157は、去年くらいから問題になっていますが、いま初めて出てきたんではないんです。
  むかし日本人は、アメリカ人が花粉症で悩んでいる、と聞いたときに笑ってい

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たんです。それが気がついてみれば、笑うどころではない、日本中にそういう人が多くいる。だから、東南アジアの人から見れば、日本人は弱いんじやないか、と。花粉症とか、変な病気になって……と思っているんじやないでしょうか。
  O−一五七の菌では、おそらく東南アジアなどの人は、この病気にならないと思うんです。やはり文明国、といいますか、先進諸国というのは、化学物質を大量に使った影響を非常に受けている。そして低抗力や免疫力がなくなってしまったんですね。
  みなさん、今日帰って、子どもさんとか奥さんが食べている饅頭(まんじゅう)を、蟻(あり)の通り道へほぐしてやってみてください。蟻が知らん顔して通ります。それから羊かん、これも蟻が寄りつかんです。私たちの子どものころの感覚からすれば、そんなバカな、と言いたくもなります。
  かまぼこでも、今日のような暑さだったら一日しかもたない。今、一週間でも十日でも、はなはだしいのは一か月も冷蔵庫に入れっぱなしでも食べれる。病気

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にならないのでしょうか。怖いですね。
  シャボン玉石けんで作る石けんは、鼠(ねずみ)がかじるんです。薬局なんかで、鼠にかじられたから交換してくれないか、と言われる。喜んで交換しています。工場に見学にきた人に、そのかじられた石けんを陳列して見せてるんです。大手メーカー品や、あのO−一五七で、薬用石けんが売れましたが、その薬用石けんなんかはぜったい鼠はかじりません。
  なぜ、蟻がテレビなどで宣伝している、老舗の饅頭を食べないか、鼠が、なぜ、きれいに包装して色のついた化粧石けんをかじらないか。
  例えば、飼われている犬や猫を洗うシャンプーですね。洗ってやると犬や猫がいやがるのです。石けんで洗ってやると、犬や猫はおとなしいです。合成洗剤で洗ってやると、泡は絶対なめない。石けんの泡はペロペロなめるんです。
  これはもう不思議といえば不思議です。飼い主が、何もわからず自分と同じように合成のシャンプーを使うから、人間と同じようなできものがある犬や猫が増

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えているんです。いったい、人間は、なぜそんなにバカになったか、といいますと、蟻も猫も犬もテレピのコマーシヤルを見ないんです。みなさんが、テレビのコマーシャルを見て、はじめ嘘だと思っても、これでもか、これでもかとやると、だんだん違う違う、と思ってたのが、テーマミュージックを口ずさむようになってくるんです。
  ヒットラーは嘘でも百篇(ぺん)いえばむこうは本気になる。こういう恐ろしい言葉を残しています。テレビのコマーシャルは、それを狙っているんですよね。
  髪サラサラとか、髪のつや、しっとりとかね。日本人の髪の毛というのは黒くて、太くて重くてつやがある。だから昔からカラスの濡れ羽色、そういうような表現をする。

与謝野晶子は、

その子二十(はたち)櫛(くし)にながるる黒髪の  おごりの春の  美しきかな 有名な歌を残しています。櫛に流るる黒髪、今はなかなか見られません。

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  バスや電車に乗りますと、頭のてっぺんが薄い子がいる。しかも、赤茶けてる。なぜかというと、朝シャンというのがあって、中・高校生がそれをやって、ゆすぎもほとんどしない。その時代はまだ抵抗力があるわけですが、二十歳を過ぎると影響が出てきます。合成のシャンプーの洗剤はどんなに薄めても、毛穴から浸透するんです。石けんはいくら泡が立っても皮膚から浸透しません。
  私の湿疹でわかったことは、下着を合成洗剤で洗ってゆすぎますが、二回や三回ゆすいでも、ものすごい量が残留しているのです。その残留した洗剤が、汗をかきますと皮膚の中に浸透しようとする、体はそれを守ろうとする。それで湿疹ができるんです。
  シャンプーもまったく同じです。頭の真中ばかりふりかけますと、頭のてっぺんだけ丸く禿(は)げた人になります。禿げる人が多くなり、これで、けらけら笑っているのが、かつらメーカーです。二十歳代のお客様が以前は五%くらいの割合だったのが、三十五%も占めている。若い人がかつらを着用し出した、ということで

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す。
結局、合成洗剤を止めないと、いくら育毛剤を使っても駄目です。頭を一生懸命にたたいたり、涙ぐましい努力をしている人がいますけれども、そんなことをするより、シャンプーを止めなきや……。
  洗剤メーカーは、シャンプーが売れると、リンスも必ず売れるんです。リンスを使うように習慣づけているんです。それでも不満足の人には、トリートメントを買いなさい。ムースもあります、とすすめるのです。そして今度は育毛剤。
  なぜそのようなことが起こるか。それは消費者のレベルが低い……。テレビのコマーシャルを見て新製品を買いに行くからです。主婦が台所用液体洗剤で食器を洗ったりして手が荒れる。そして皮膚科に行きお金を使っている。液体洗剤を止めれば手は荒れない。石けんを使えば手がすべすべしてくるんです。それが分かっていません。
今は、台所用液体洗剤でも、植物油原料一○○%、という誇大広告をやってい

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ます。あのA社が、植物油原料一○○%といって、テレビで宣伝したら、B社が「嘘ではないか『今までは、石油からアルコールを作っていたが、椰子(やし)から作るようにした。だから植物油一○○%だ』と表現しているが、現実には椰子油を使っている、といっても、それは三○%にすぎない。一○○%というのは不当表示だ」と公正取引委員会で問題にしたんです。ところが、B社も「こうすれば売れるんだから、そうは言ったが、うちもやれ!」と言っていた文句もさっさと取り下げて・…。「目くそ鼻くそ」のたぐいですよ。消費者というのは、「トウモロコシを使っています、椰子油を使っています」というのに弱い。
  通産省による「品質表示にもとづく表示」があり、必ず洗濯用と台所用に分けて表示することになっています。洗剤は、椰子油であろうが米を使おうが、洗濯用合成洗剤、台所用合成洗剤と表示しています。石けんは洗濯用粉石けん、台所用固型石けんと必ず表示しています。
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